1999.01 リュックを青空屋から
引き取った日に撮影した写真↓
■リュック、彦ちゃんと出会う■
それは、1998年の夏のこと。
何月だかは忘れた。7月か、8月か。 彦ちゃんが娘(当時5歳。以降、仮にミドリちゃんとします)の家に行っていたときのことだ。
彦ちゃんとミドリちゃんが道を歩いていると、1匹のサバトラの猫が道の真ん中で寝ていた。まだあどけない顔ではあるが、身体は大きいので、子猫なのか大人猫なのか判断に苦しむといった猫だ。住宅街の中の道なので、ひっきりなしに車が走っているというわけではないが、そこそこは車が通るらしい。で、「こんなところで寝てたらあぶないぞ」と、その猫を持ち上げて、すぐそばの小さな児童公園の植え込みのところに置いた。「じゃあな」とその場を去ると、その猫があとをついて来た。「ついてきちゃだめだよ」とかなんとか言ったのだろうが、けっきょくミドリちゃんの家までついてきてしまった。それで、なんとなく、ミドリちゃんの家で飼うことになった。ミドリちゃんがリュックと名付けた。(1998.08ひこ撮影/ミドリちゃんちの近くの公園で)
■リュック、私と出会う■
(1998.09.01撮影/うちの洗濯機の上で、物置の扉を開てのぞくリュック)
8月31日に、リュックを1泊2日で借りた。この日、私は初めてリュックに会った。そのときの印象は「かわいいけど、なんかヘン?」だった。たしかに子猫っぽくはあるが、ふつうの大人猫ぐらい大きい。目もすごく大きい。でも、顔はなんとなく扁平なかんじ。頭なんか、ものすごく平らである。しかも、なんだかしっぽが異常にぶっとくて長い。ひきずって歩いている。まるでエレキングのようではないか。
でも、家に猫がいるのはいいものだ。ビデオや写真を撮った。
9月1日に斉藤動物病院に連れていって診察をしてもらった。まだ乳歯があるので生後5ヵ月くらいの子猫だろうと言われた。なるほど、びみょうな年頃だったのだな、と思った。特に健康上の問題はないようだったので、第1回目の三種混合ワクチンを接種してもらって帰ってきた。うちの近所を、リードをつけて散歩させてみると、日陰から日陰へぴょんぴょんとジャンプしながら、ちょっとだけ歩いた。
その日の夕方、リュックはミドリちゃんの家に帰った。その後、リュックと会うことはなかった。
■リュック、行方不明になる■
その年の秋、何月だったかは忘れたが、9月か10月かそのくらい、リュックがいなくなったと聞いた。ミドリちゃんの家に帰ってこないらしい。小学校の校庭で子どもたちと遊んでいたとか、そんな噂もあったらしがリュックは見つからなかったそうだ。
リュック不在の日々が続いたある日、リュックによく似た猫が馴れた様子でミドリちゃんの家にやってきた。ミドリちゃんはてっきりリュックが様変わりして帰ってきたのだと思い、飼っていた。しばらくして、やはりリュックではないと気づいたが、その後もリュックと呼んで飼っていたのである。
■リュック、私と再会する■
その年の12月の終わり、私たちはミドリちゃんちの近くの町に越してきた。
年が明けて1999年の1月のある日の朝、私は駅へと急いでいた。ふと、猫と、猫を連れたおじさんの姿が目に飛び込んできた。おじさんはフェンスに囲まれた空き地に猫をつなぐと、隣の店(以降、仮に青空屋と書きます)のシャッターを開けて中に入っていってしまった。
猫を空き地につないでおくのか。寒いのになあ、と思って猫をよく見ようと思ったのだが、フェンスの扉はしまっていて、猫は遠くにつながれている。リュックとおんなじ柄の猫だ、と思ったが、そのときは先を急いでいたので、そのまま行き過ぎた。
仕事を終えて家に帰ってから、彦ちゃんに青空屋の猫の話をした。
次の日、二人でその猫を見に行った。やはり、空き地につながれていた。「リュックに似てるなあ」と言いながら、彦ちゃんは勝手にフェンスの扉を開けて、空き地の中へ入っていってしまった。店の人に見つかったら怒られるんじゃないかなと思いながらも、私も空き地に入っていった。
そこにいたのは、正真正銘のでっかいデブ猫だった。柄はサバトラ。リュックに似ていないこともないが、何とも言えない。が、よく見ると、金の鈴がついたヒョウ柄の首輪をしていた。
「これ、リュックだ!」私たちは確信した。
リュックのそばにしゃがむと、リュックは私を見つめながらヒザにのぼってきた。まさか私のことを憶えているわけではないだろうが、胸がキュンとした。
でも、お気に入りの白いコーデュロイのパンツが汚れてしまいました。
店の人に事情を話し、リュックを引き取ることにした。
なぜ、リュックがつながれていたのかというと、「首輪もしていたし近くの家の飼い猫だと思い、空き地につないでおけば飼い主が通ったときに目につくだろう」という配慮であった。夜は店の中に入れて戸締まりをしていたそうである。
実際はここからミドリちゃんの家はかなり遠い。徒歩20分くらいだろうか。
しかし、飼い猫をわざわざつないだりするだろうか? いいや。飼い猫だとわかれば、ほおっておくのが普通である。しかし、リュックをつないでおかなければならない決定的かつ重大な理由が他にあったのである。
「店の前の道で寝てたんだよ。どかしても、すぐに道の真ん中に行って寝ちゃうから、危なくってね」
ちなみに、店の前の道とは車がびっしりの中山道である。なんと恐ろしいことであろうか!
こうして、リュックは心優しい人に助けられていたのであった。
ポンタと呼ばれて、店の人やお客さんにかわいがられていた。
ドッグフードを食べていた。
洋服もつくってもらっていた。「ポンタ」という文字と渦巻き模様が描かれた、ジャージでできた上着である。
青空屋のみなさん、ほんとうにありがとう。ろくにお礼もせずに申し訳ないです。
さて、本来ならリュックはミドリちゃんに返すべきであるが、ミドリちゃんのうちにはすでに別のリュックがいる。だったら、うちで飼うしかない。
こうして、めぐりめぐって、リュックは我が家にやってきたのです。
青空屋からリュックを抱いて家に帰るまでの道のりと、おとなしく抱っこされていたリュックのあったかさ、そしてその重さ! 今でも忘れられません。
たった3分の道のりで、本当に助かった!
■余談:リュックの名前■
ミドリちゃんが、なんで「リュック」という名前を付けたのかはわからない。たぶん、本人だって憶えていないだろう。もしかしたら『星のカービィ』に出てくる「リック」が元か?
で、名付け親 の意図はわからないが、私個人としては、リュックはあの、スタートレックのピカード艦長にあやかった名だと、勝手に決めている。
フルネームは「ジャン・リュック・ピ・カード」なのだ! ピカードだとまったく同じになっちゃってナンだから、ピ・カードね。どうだぁ、すごいだろう!
でも、リュックは残念ながら、おバカで完全に名前負け。
頭の毛をそらないとダメかね。
■ホントの由来!?:リュックの名前■
ミドリちゃんが彦ちゃんリュックの名の由来を打ち明けたそうです!
じゃじゃじゃじゃ〜ん。
なぜ「リュック」と名付けたのかっ!
実は実はっ!
当時、ミドリちゃんは「リュックサックが大好きだったから♪」って.......くはっ
そんな鞄好きな彼女ですが、最近ではごろごろ引きずるキャリーつき旅行鞄が欲しいらしいよ。